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2016年10月11日 (火)

『電通事件』の教訓はどこへ(その1)

 7日にショッキングなニュースを目にして胸が痛んだ。《電通・東大卒女性社員が過労死「1日2時間しか寝れない」クリスマスに投身自殺》(産経新聞)という見出しであった。この女性(当時24歳)は、業務の増加に伴い残業が増え、うつ病を発症していたとみられるという。別の報道によると、《上司からは「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」「目が充血したまま出勤するな」などと叱責されていたという》(時事通信)。

 言わずもがなだが、電通は日本の広告代理店トップ企業として知られている。一般には、華やかな業種の一流企業というイメージが持たれていると思うが、労働法やメンタルヘルスを扱った本には頻繁に登場する企業でもある。過去にも若手社員が長時間労働でうつ病になり自殺した事件があり、遺族が会社に対し損害賠償を請求する民事訴訟となったことから『電通事件』と呼ばれている。

 
この『電通事件』は最終的には金銭的な和解が成立したが、2000年の最高裁判決の中で使用者の安全配慮義務違反が認定された。会社は社員の健康に配慮する義務があるのに果たさなかったと断じたのである。この判例が契機となって行政が動き、使用者の安全配慮義務を明文化した労働契約法が制定され(2007年)、現在に至っている。

 過労自殺が社会で広く認知され始めたのは、『電通事件』がきっかけだとする見方もある。それほどの事件の当事者でありながら、また同じような構図で社員が自殺に追い込まれたというのは、電通は『電通事件』から何を学び、教訓としてどう社内で活かしてきたのだろうかと思わずにはいられない。皮肉にも今月7日、世界に例を見ない『過労死白書』(厚生労働省『過労死等防止対策白書』)が初めて公表されたが、来年以降の報告書では、電通が再び過労死の歴史に名を刻むことになるかもしれない。

 
今回亡くなった女性について、労働基準監督署が労災認定していたことが報じられているが、《社員の自殺については厳粛に受け止めている。労災認定については内容を把握していないのでコメントは差し控える》(時事通信)という電通の話は、あまりに型どおりで深く反省しているようには私には読めなかった。嫌な言い方に聞こえるかもしれないが、今後もまた犠牲者が出るような気がしてならない。

(2016年10月11日記)

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