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2016年10月14日 (金)

将棋界に激震!三浦九段に不正疑惑

 大変なことが起きてしまったと思った。12日夜、ネットでニュースを見ていると、《<将棋連盟>三浦九段の不正調査…対局中ソフト利用か》(毎日新聞)という記事が目に飛び込んできた。本文には、以下のような記述があった。

《日本将棋連盟は12日、三浦弘行九段(42)を年内の公式戦出場停止処分にしたと発表した。直接の処分理由は、提出を求めた休場届が期限までに届かなかったため。三浦九段は対局中に不自然な形で離席することが多いと対戦した棋士から指摘があり、将棋ソフトを不正利用しているという疑惑が浮上。連盟側は三浦九段から聞き取り調査を始めていた》(毎日新聞)

 三浦弘行九段といえば、プロ棋士のトップグループにいる一人である。そんな一流棋士が、対局中に離席し、スマホで将棋ソフトを使っていた不正疑惑が浮上。本人は、《「別室で休んでいただけ。疑念を持たれたままでは対局できない。休場したい」と話した》(朝日新聞)ということだったが、期日の翌12日までに休場届が提出されず、連盟が処分を決めたというのが現在までの流れである。

 近年、将棋ソフトの棋力がプロ棋士を凌駕するまでに向上したため、棋士はソフトを使うことで、難解な局面の優劣を判断したり、指し手の有力な候補手を見つけることを高い精度でできるようになった。こうした環境変化を受け、プロ棋士の間では、ソフトを搭載できる電子機器類の対局場への持ち込みを禁止した方がよいとする声がすでにあがっていた。その筆頭格は渡辺明二冠(現竜王・棋王)であったと私は記憶しているが、当の三浦九段本人も同じ趣旨のことを本の中で述べていたのである。

《三浦弘行:(棋士が)対局中に電子機器を取り扱うのは禁止にしたほうがいいですね》

(『ドキュメント電王戦 その時、人は何を考えたのか』(2013年発行、夢枕獏著、徳間書店))

 三浦九段は今回の一件につき、《「まったくのぬれぎぬ。不正な行為は行っていない。今後は弁護士と相談して行動する」》と新聞社の取材に答えており、真相は明らかになっていない。“黒判定”には至っていないが、連盟側の疑念を払拭できておらず、今はグレーと見られても仕方がない状況になっている。

 どういうやりとり及び聞き取り調査が連盟と三浦九段との間で行われたか不明だが、思うに、三浦九段が身の潔白を証明するには、保有しているパソコンやスマホ、タブレット端末などの電子機器を連盟に提出して、徹底的に調べてもらうしかないだろう。連盟がITの専門家に依頼すれば、対局していた時間帯にこれらの機器の将棋ソフトが動いていたかが分かり、全てがクリアになるはずである。三浦九段が《弁護士と相談して行動》したところで、肝心なことは証明できないのではないだろうか。

 ここで私は、STAP細胞騒動時の小保方晴子さんを思い出す。弁護士の先生方が懸命に守勢の小保方さんをサポートしたが、「STAP細胞はあります」と言い切ったご本人が、再現実験を成功させることができなかったため、誰も納得させることができなかった。三浦九段が「不正はありません」と言い切って周りを納得させたいのであれば、電子機器を使用した事実がないことを客観的に示す以外にはないと思う。弁護士云々の話ではない。

 今週末から将棋界最高峰のタイトル戦『竜王戦』が開幕するが、三浦九段はその挑戦者になっていたため、連盟が下した処分により出場できない異例の事態となった。そして代わりに、挑戦者決定戦で敗れていた丸山忠久九段が出場し、渡辺明竜王と対戦することが発表された。急遽、挑戦者に繰り上がった丸山九段は準備が満足にできていないだろうし、受けて立つ渡辺竜王も作戦を練り直す必要があることを考えると、両対局者が万全の態勢で臨めないのは将棋ファンとして残念というほかない。

 
唯一、不幸中の幸いだったのは、『竜王戦』が始まった後の段階で、挑戦者・三浦九段の不正疑惑が持ち上がらなかったことである。タイトル戦そのものに傷がつく汚点は、ギリギリのところで回避できたと見ていいだろう。私は将棋ファンとして『竜王戦』の対局が当然気になるが、今回の疑惑がどう決着するかも目が離せないことになった。明るい話題ではないだけに、複雑な気持ちでいる。

(2016年10月14日記)

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