« 昭和の女性にはデリケートな話 | トップページ | 徘徊の先後 »

2016年9月 3日 (土)

ディスカウントストア「ドン・キホーテ」の不思議

 最近、『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』(201511月発行、安田隆夫著、文藝春秋)という本を読んだ。上場企業にまで成長したディスカウントストア、ドン・キホーテの創業者である安田隆夫さんが、自らの起業家・実業家人生を振り返ったものだ。

 読後感は非常に良かった。派手な店舗作りと営業のイメージから、イケイケドンドンの人物かと思いきや、安田さんはリスク感覚も高い経営者だという印象を持った。他の大手流通チェーンとは企業戦略が異なり、基本的には逆張り路線だが、狙いや考え方は筋が通っていて立派な方だと感じられた。

 ここで、以前観たテレビ東京の経済番組を思い出した。今年2月9日に放送された、ガイアの夜明け『密着!会社と闘う者たち〜長時間労働をなくすために〜』がそれである。この番組では、ドン・キホーテが従業員に違法な長時間労働をさせている様子が映し出された。それはもう、ブラック企業と言ってもおかしくない内容であった。

 テレビ番組ゆえ何かバイアスがかかっているかと思ったが、別にメディア報道があった。そこには、《大手ディスカウントストア「ドン・キホーテ」が従業員に違法な長時間労働をさせていたとされる問題で、東京労働局過重労働撲滅特別対策班は1月28日、労働基準法違反の疑いで、法人としての同社と執行役員や店舗責任者ら計8人を東京地検に書類送検した》と記載されていた。これを受けて会社から、謝罪文が記載されたニュースリリースも出されており、違法状態だった事実を会社側が認めた格好となっていた。

 私には、「あの安田さんがいるのに、なぜこんなことになったのか?」という疑問がわいた。ブラック企業視されるような酷い実態と安田さんの人物像とのかい離があまりに大きく、理解ができなかったのだ。私は情報を整理すべく、細かく時間を追ってみた。安田さんは20156月末に代表取締役を退任して経営から離れており、自書『安売り王一代 私の「ドン・キホーテ」人生』は201511月に発行されている。労働基準法違反の疑いによる書類送検は20161月のことである。経営者が交代すれば、こんな短期間に企業は歪んでしまうのだろうか、と私は考え込んでしまった。

 企業の不祥事や盛衰をテーマにした書物を紐解くと、「企業はトップから腐る」という言葉がよく出てくる。安田さんがトップの頃から腐り始めていたのかどうか……。杜撰な労務管理の実態が白日の下に晒されてしまったのは、後任の大原孝治さんという生え抜き社長には試練だが、上記の報道及び書類送検を奇貨として、業績以外の視点から見ても優れた会社へと成長させていくほかあるまい。

 
私はずっと以前から、ドン・キホーテには時々買い物に行っている顧客である。が、店舗内を見て歩く限り、何か変化を感じたり、不審に思うようなことは一度もなかった。今回は、企業を観ることは本当に難しい、と改めて感じさせられた。

(2016年9月3日記)

« 昭和の女性にはデリケートな話 | トップページ | 徘徊の先後 »

メディア(テレビ・ネット他)」カテゴリの記事

人物」カテゴリの記事

企業経営」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/573382/64153409

この記事へのトラックバック一覧です: ディスカウントストア「ドン・キホーテ」の不思議:

« 昭和の女性にはデリケートな話 | トップページ | 徘徊の先後 »