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2016年7月30日 (土)

正社員の苦言

 いつもの席から離れた場所で、私を含む8人ほどのスタッフで一つの大きなテーブルを使って仕事をしていたことがあった。黙って作業に向かう人もいれば、時々隣とおしゃべりしながらという人もいる。個人別の業務量は、ノルマが設定されていなかったから、各自のペースはまちまちである。“事件”はそんな時に起きた。

 私たち8人の仕事をマネジメントしている正社員が自席から立ち上がりこちらへやって来た。何か指示事項でもあるのかと思いきや、こんなことを話し始めた。

「みなさん、ちょっと聞いてください。

 話し声が私の席にまで聞こえていますので、注意してください。みなさんのすぐ近くで電話をかける仕事をしているチームの人たちがいますが、その人たちより大きい声が聞こえます。そんな大きなおしゃべりが聞こえるのはどうかなと思います。

 仕事中、全く話をしてはいけない、とは言いません。ある程度話をするのは構いませんが、周囲への配慮をお願いします。これが守られないと、席を替えるといったことを考えないといけなくなります。宜しくお願いします」

 私は仕事中、殆ど話をしない人間なので、他の人に苦言を呈しているのは明らかであった。楽しそうにおしゃべりしていた数人が、言われたことをどう受け止めたかは分からないが、私はこの正社員の注意を「上手い」と思った。というのも、穏やかな言葉と口調ながらも、改善してほしい態度をはっきりと伝え、その一方で個人名を挙げての個人攻撃はせず、言ったことが守られなかった場合の“ペナルティ”にまで言及したからである。なかなかの手綱さばきであった。

 数日後、私はたまたま別の部署に移って新しい仕事をしていた。その時、やや声のトーンは控えめではあったが、以前のテーブルで作業をする女性の甲高い声が私の耳にはっきり届いた。この時私はピーンときたのである。正社員が注意したかったのは、この女性だったのだなと。視点を変えると、色々なことが見えてくる。そして私たちが自分を客観視するのがいかに難しいかもよく分かった。

(2016年7月30日記)

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