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2016年7月18日 (月)

時に厄介な“いい人”

 ある日職場で女性二人がこっそり話をしているのが耳に入った。目の前を通り過ぎた同僚の男性派遣スタッフ(Mさん)についての噂話である。私の感度のいい耳がキャッチするとは思っていなかったろう。こんなことを言っていた。

「Mさんって、いい人っぽいですよね?」

 相手の女性も同意した。“いい人っぽい”ではなく、はっきりと「いい人ですよね?」でよかったのにと思いながらも、私も内心同意した。確かにMさんはいい人である。職場で怒ったり不機嫌になった姿は一度も見たことがないし、こちらが求めもしないのに、「昨日の業務は○○だったので、今日は△△から仕事が始まると思います」と教えてくれる。とても親切な“いい人”である。

 少し遡るが、こんなことがあった。その日はたまたま業務量が極端に少なく、午後三時を過ぎたあたりから本当にやることがなくなってきた。するとMさんは、正社員の責任者のところに行き、「いいですよ。仕事がなくなったら今日は早くあがっても」と進言したのである。

 私は「余計なことをして!」と思った。Mさんの発言は、自分だけのことを言ったつもりだろうが、その日出勤していた他のスタッフにも影響を及ぼしかねないと思われた。なかには、「定時までは仕事をする契約になっている」と考え、仕事がなくなっても給与は支払われる“待機”を望むスタッフがいてもおかしくはない。Mさんの思考は、そうしたことまでは及んでいないように見えた。

 他の日のことだが、別の男性スタッフが仕事中に長い時間トイレから戻ってこないことがあった。周囲が心配していると、しんどそうな顔をして帰ってきた。ひどい腹痛だという。そこで隣の席の人が「今日は早くあがれば?」と言うと、きっぱりとしたこんな返事が返ってきた。

「いえ、お金を稼がないといけませんから」

 そうなのだ。少々体調が悪くても、仕事をすることを優先する人(優先せざるをえない人)もいるのだ。だから安易に、「今日は早くあがってもいい」と働く者みんなを代表しているととられかねないようなことを口にするのは慎んだ方がよいのである。

 今日の話は一例だが、“いい人”というのは時に厄介に感じることがある。もう少し深く考えてから行動したらいいのに、と私などは思うのだが、本人に悪気は全くないからいかんともしがたい。まあ、悪気が全くないからこそ、“いい人”と言われるのだろうが……。

 私は彼女たちに、“いい人”と言われていないに違いない(絶対の自信がある)。世間話はしないし、関係の薄い人とは容易に打ち解けないし、本音を言わないし、疑り深いし……。Mさんが“いい人”と言われているのを聞いて、私は自分が何と評されているか興味が湧いたが、それもすぐにしぼんでいった。他人がどう思おうと、自分には関係のないことだと思い直したからである(こういうところが“いい人”ではない!)。

(2016年7月18日記)

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