« 将棋・藤井聡太三段が快走 | トップページ | 本来の妻 »

2016年7月22日 (金)

あなた

 些事ながら、こんなことがあった。職場でだが、朝責任者の方がスタッフ一人一人にその日の業務内容を伝えにやってきた。その際、なぜだか分からないが、開口一番、一番近くの女性スタッフに、「あなたは○○をやって下さい」と話しかけた。それで一瞬、変な空気が漂った。あとのスタッフはみな、「Aさんは……」、「Bさんは……」といった具合に名前で呼ばれたが、最初の女性への話し方が不自然だったためである。

 責任者がその場を去った後、女性の口からポロッと本音が漏れた。

「いきなりの“あなた”にはイラッとしたわ」

これには周囲の女性たちが静かに笑いながら頷いた。

 “あなた”は、どうやら扱い方が難しい二人称のようである。日常生活で他人に対し、のべつまくなしに“あなた”を連発したならば、「自分は仲良くするつもりがない人間である」というメッセージを暗に送っている感じがする。外国の人には理解しづらい用法の世界かもしれないが、英語の“You”とは異なり、“あなた”は冷たくよそよそしく聞こえるのだ。

 そうかと思うと、ラブレターに現れそうな文章、例えば「あなたのことばかり想っています」の“あなた”には、相手への特別な感情がこもっていて、冷たいどころか真逆である。愛する人を指す二人称といってもいいだろう。また、「あなた、部屋が片付いていないじゃない!」のように、妻が夫に向かって言う使い方もある(この場合は言うまでもなく、特別な感情はない)。

 ここまで読んだ読者の方は、「辞書を見ればきちんと“あなた”の意味が説明されているのでは?」と思われたかもしれない。言い訳をしておくと、あいにく私は今、この文章を電車の中で書いており(辞書はない)、しかもスマホを持っていないから、辞書的な説明を加えることができない。

 「そういう態度はダメじゃないか」ですって?すみません、その点につきましては、あなたのおっしゃる通りです。何卒ご容赦ください。

(2016年7月22日記)

« 将棋・藤井聡太三段が快走 | トップページ | 本来の妻 »

人間関係」カテゴリの記事

言葉について」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/573382/63980372

この記事へのトラックバック一覧です: あなた:

« 将棋・藤井聡太三段が快走 | トップページ | 本来の妻 »