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2016年6月22日 (水)

奨学金利用の心構え

 録画してあった今月2日放送のクローズアップ現代+『“奨学金破産”の衝撃 若者が… 家族が…』(NHK)を観た。今や大学生の2人に1人が奨学金を借りる時代になり、しかも、「返したくても返せない」若者が急増した結果、自己破産した件数が累計で1万件にのぼるという。奨学金が返せなくなる人の増加は、急に社会問題として浮上したわけではなく、じわじわと広がってきた印象だが、番組を観てこれほど事態が深刻だとは思わなかった。

 ここで私自身のことを少し書いておこう。大学生の時、日本育英会(当時)の奨学金を利用した。親からの月十万円ほどの仕送りでは少し余裕がなかったので、親に書類を頼んで無利子の奨学金の申請手続きを取って認められた。三、四年生時の2年間利用したから、総額で200万円ほど借りたのだろう。

 
「200万円ほど」と一応書いたが、私は不思議なことに総額で幾ら借りたのか正確な金額の記憶がない。それほど借金についての自覚がなかったということである。社会人になって稼ぎ始めてから完済したが、何年かけて幾らずつ返済したのかも覚えていない(これでよく返済できたものだ)。思いの外時間がかかったような気はするが……。こんな程度の意識で返済を終えられたのは、ひとえに当時の雇用・所得環境が今ほど悪くなく、私が正社員として就職できたからにほかならない。そういう意味で、僥倖であった。

 私が学生の頃と今とでは、時代が変わってしまった。教育費(大学の入学金や授業料)はバカ高くなった一方、大卒の価値は著しく低下した。進学を支える親の平均年収は低下傾向を辿り、今は仕送額の平均は月8万円台に下がってしまった。だから、学生の多くが奨学金に頼る事情はよく分かるが、それに見合った将来のリターン(好待遇の仕事など)が得にくくなっている。学生にとっては大変しんどい時代で、気の毒に思う。

 今日ここで私にできることは、「今自分が学生の立場だったらどうするか」というアドバイス的な考え方を示すことではないかと思う。私なら、奨学金は利用しつつも、時間を有意義かつ効率的に使ってアルバイト等でしっかり稼ぐこともし、学生のうちに借金の残高をなくしたい。全額とはいかなくても、少しでも多く返しておきたい。感覚的には、社会に出た時に300万円以上の残高が残っていては、金銭的にも精神的にも負担が大きすぎると思う。

 「アルバイトなら、大抵の学生がすでにやっている」と言われそうだ。私ならその時間を増やしたい。アルバイトする時間が足りなければ、部活・サークル活動は思い切ってやめる。そのために友達が減ったとしても、目をつぶるしかないと割り切る(友達が減っても自己破産にはならない!)。学業や資格とアルバイトのバランスを上手くとって、とにかく借金をできるだけ抱えないようにするのである。大人ですら借金(各種ローン)の返済は大変なのだから、世の中を知らない学生は言うまでもない。

 そして、就職が最も注意を要するポイントとなる。クローズアップ現代+には、保育士の職に就いたものの、非正規社員であったため、その収入では奨学金の返済資金を捻出できず自己破産に追い込まれた29歳の女性が登場していた。この女性は一例だが、公式的に表現すれば、<奨学金利用+非正規社員 ⇒ 奨学金返済の延滞(ひどい場合は自己破産)>という流れが出来上がってしまっていると思う。

 一般に、非正規社員での働き方では、今を生きる生活費程度しか稼ぐことができない。将来(老後)の生活費や家族の生活費までまかなうのは難しく、同様に、過去の生活費(学生時代に使った分)をカバー(返済)するのも困難である。ゆえに奨学金を利用した学生は、とにかく正社員として就職し、奨学金の返済が終わるまではその立ち位置から離れずに安定的な収入を得ることが大切だと私は思う(なお、正社員といえども、就職先がブラック企業の場合はこの限りではない)。

(2016年6月22日記)

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