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2016年6月 3日 (金)

私と妻の気掛かり

 5月31日の夜、我が家は暗い空気に包まれた。妻は夕食後、「あーあ」を連発してため息をつく。私も元気が出ず、何かをする気にならなかった。この日行われた将棋名人戦第5局で、羽生善治名人が失冠したためである(これに伴い、名人・王位・王座・棋聖の4冠から3冠へと後退した)。

 新名人となったのは、佐藤天彦八段。タイトル戦への挑戦は三度目だったから、まさに三度目の正直であった。天彦さんは、順位戦で最上クラスのA級入りを果たした後、すぐに名人への挑戦権を獲得し、この度4勝1敗で羽生名人を押し切った。将棋界にとても強い棋士が出てきたこと、新たなスターが誕生したことは、素直に歓迎すべきことだと思う。

 が、その一方で私は、二十八歳の佐藤天彦新名人に屈した四十五歳の羽生さんの調子が心配になる。先に行われた竜王戦の予選では、同じく若手強豪の豊島将之七段に敗れて、今年度の竜王戦本選への出場権がなくなっていた。竜王というタイトルへの挑戦の芽がなくなり、保持していた名人というタイトルを失冠し、そして今日は朝から棋聖戦の防衛を賭けた戦い(五番勝負の第1局)が始まる。羽生さんは百戦錬磨とはいえ、スケジュールがタイトななか、上手く気持ちを切り替えられるか、ファンとしては気になって仕方がない。

 
棋聖戦の相手は永瀬拓矢六段。二十三歳の伸び盛りの若手で、初めてのタイトル戦登場となる。ここに、羽生ファンから見て気になるデータがある。それは、過去の羽生-永瀬戦は3局あり、全て永瀬六段が制していることである。対局数がそもそも少ないので参考程度の情報だが、永瀬六段が「第一人者の羽生さんには歯が立たない」というコンプレックスを持っていないことは大きそうに見える。

 もしも羽生3冠が棋聖をも失うことになれば、棋力の陰りを指摘する向きが増え、「“羽生世代の終わり”の始まり」とでも称されるようなターニングポイントとなるかもしれない。同じ四十代後半の私としては、羽生さんに是非踏みとどまってほしいと願っている。

【追記】

 名人戦が決着した翌6月1日の夜も、妻は唐突に「あーあ」とため息をついた。そして、「さて、何の「あーあ」でしょう?」と聞いてきたので、「羽生ちゃんのことでしょ」と解答すると、あっさり「正解です」ときた。その声は元気がなかった。妻は案外引きずるタイプなのであった。

(2016年6月3日記)

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