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2016年5月 1日 (日)

人を見抜く力

 芸能ニュースに疎いせいか、私は記憶になかったのだが、X JAPANのボーカルToshlさんが長年に亘り洗脳されていたことを、遅ればせながら最近知った。知るきっかけは、ご本人の『洗脳-地獄の12年からの生還-』(2014年発行、講談社)という自伝的告発の書である。洗脳された結果、騙し取られたお金が12年間で10億円以上に上ったという。金額の大きさにも驚いたが、Toshlさんの当時の妻・守谷香が洗脳を主導した人物(MASAYA)と裏で通じ合って、罵声や殴る蹴るなど信じられないような精神的肉体的暴力を夫Toshlさんに加え続けた様子に、私は戦慄を覚えた。

 この守谷香という女性、元アイドルだったらしく、ネットに掲載されている数々の写真を見ると、当時は可愛らしい容姿であった。仕事で知り合ったToshlさんは、彼女について《おとなし気な雰囲気が逆に印象に残った》と好印象を抱いたことを本に記しておられるが、惹かれて惚れて結婚した後、悪妻どころか鬼畜と化すとは夢にも思わなかっただろう。

 結果的に見れば、Toshlさんには人を見抜く力がなかったということになるのだが、結婚して暫くしてから、彼女の人となりを冷静に見抜いた人物が近くにいた。銀行員として仕事をしていたところ、Toshlさんの誘いで事務所の経営を任されるようになったToshlさんのお兄さんである。

《次兄は直接僕に守谷に対する辛辣な言葉を並べた。

「守谷香は演技をしているだけだぞ」「自分の生きてきた銀行業界の常識では、ああいう感じの人は最も危ない」「あんな目をした女には気を付けたほうがいい」》

(『洗脳-地獄の12年からの生還-』(2014年発行、Toshl著、講談社))

 見る目がある人はいるものである。身内に分かっている人がいながら、当時の大変な状況から耳を貸すことができなかったのは、Toshlさんにとっては不運かつ不幸であったと思う。しかし一方で、私はこうも考えた(自問した)。目の前の人が本当に“演技”に徹したならば、私は真の人となりを見抜けるだろうか?

 毛色は違うが、最近読んだ別の本に、この“演技”に関連したことが書いてあった。勤め先のベンチャー企業で抜群の営業成績をあげた一人の女性(ヒロミさん)が、漫画家の柴門ふみさんにそのコツを話すくだりである。

《(一年で新卒の8割が退職した会社でヒロミさんは)新規契約獲得数で、新人ナンバーワンとなるのだ。

「水商売で鍛えてますから、笑顔で人に取り入るの、得意なんです」

そう言って彼女は、永作(博美)風にくしゃりと笑った。その笑顔に、媚びたところは全く無い。媚びなんか必要ありません、そんなもの使わなくても私は充分生きて行けますという凄みが、彼女の笑顔にはある。

「誰だって、どんな薄毛でもデブでもいいところがあるでしょう? そこを見つけて、疑似恋愛の感情を抱いて接客すると、契約はすぐ取れます。その方法を私は水商売で学んだんです。<恋愛してる>とでも思わないと、酔っ払い相手のカネ稼ぎなんで、やってられませんから」》

(『大人恋愛塾』(2015年発行、柴門ふみ著、新潮社))

 私はこの女性を恐ろしいと感じながらも、なるほどと思った。恋愛感情があるかのように演技されると、コロッといってしまうのは理解できる。その調子で、営業の人に好意を持っているように接されると、印鑑を用意し要らない契約だってしてしまうだろう。相手は、本気で演技をしているのだから、見抜くことは至難のわざという気がする。

 
私は結構冷静な人間で、人を見抜く力もある方だと自認してきたが、なんだか怪しくなってきた。そこで告知です。今後私と会う用事や機会が出てきた方は、その際はどうか私に気があるようなそぶりをしたり、変に優しくしないで下さい。そのまま寄りかかってしまいそうになる自分と、猜疑心を持って人の本性を射抜こうとする自分との間で、身が引き裂かれそうになるのが今からとても心配なのです。

(2016年5月1日記)

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