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2016年4月11日 (月)

職業との相性の大切さ

 今月になって都心の駅を歩いていると、「新社会人だろうなあ」と感じる一群をよく見かける。顔もスタイルもスーツも全てがフレッシュだから、本人達が意図せずとも、周りにそう感じさせるのである。私には彼ら、彼女らを応援する気持ちがある反面、心配になることもある。それが今日のタイトルにある『職業との相性』である。相性の良い職業に就いていればいいのだが、と老婆心ながら思う。

 昔このブログで、医師に自分が向かないと気づいた人の話を紹介したことがある。本からの引用で、次のような一節であった。

《子どもの頃から医者をめざし、猛勉強して医学部に入った友達がいる。彼は幼い頃から自分の道を決め、確信をもって進んでいた。ところが研修医になった時、彼は大量の血を見て貧血を起こしてしまったんだ。そんな事態に遭遇して初めて、「自分は医者なんて全然向いていないんだ」ということに気づいたんだという》

(『99人の小さな転機のつくりかた』(2010年発行、『ビッグイシュー日本版』編集部編、大和書房))

 医師ばかりではない。同じく難関国家資格を要する、一人で開業が可能な専門職として知られる弁護士でも、そういうことがある。精神科医・香山リカさんの著書に、うつ病で診察室を訪れた弁護士の例が載っている。職業との相性について考えさせられる事例である。

《大学生活はそれなりに楽しかったが、企業に就職してみると「どうも違う」という気がしてきた。「弁護士になれば事務所を開業してマイペースで働ける」と聞いたので、司法試験を受けてみようと思い立って会社を辞めた。

 参考書や問題集を計画的にこなしていくのは得意だったので、思ったより順調に勉強が進み、2度目の挑戦で司法試験に合格。修習期間も問題なく終えて、「実家から通いやすい」という理由で、この弁護士事務所に就職することになったのだという》

《大学を卒業し、一般企業に数年間勤めたあとに一念発起して司法試験に合格したカナエさん(34歳)は、修習生期間をへて就職した弁護士事務所でも「才色兼備」と評判になるほど目立っていた。最初はやる気満々で仕事に臨んだように見えたカナエさんだったが、2ヶ月くらいたつと遅刻や欠勤が目立つようになってきた》

《(弁護士事務所の所長に対して、体調を崩した)カナエさんは、自分でチョイスしたワインを飲みながら言った。

 「弁護士の仕事って、こんなに大変だと思ってなかったんですよ。私って過保護に育てられたから、窃盗とか傷害とかそういう怖い事件を見たのは初めてで、もうびっくりしちゃって」》

(『うつになる職場 ならない職場』(2015年発行、香山リカ著、にんげん出版))

 今日は医師と弁護士を例に取り上げたが、勉強ができる、思考能力の高い人でさえ、自分にとっての適職を見つけるのは結構難しいということである。人は、特に若いうちは、思い込んだら一途に突き進む傾向があるから、その過程では、職業との相性をチェックする冷静な視点、客観的な視点が欠けがちになるのであろう。人生の回り道は無駄にならないとも言われるが、早いうちに適職に出会えるに越したことはない。

 
このブログの読者に学生の方は少ないだろうが、伝えたいことを纏めておこう。まだ就職まで時間的猶予のある学生には、目先の勉強や部活・サークル活動等ばかりに集中するのでなく、自分がどういう人間かを振り返り、それが志望する職業の“現実”と合っているのか、きちんと確認する作業をお勧めしたいと思う。

(2016年4月11日記)

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