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2016年3月15日 (火)

雇う側のモラル

 人から聞いた話を思い出した。その人(以下、Mさんとする)は、企業で派遣スタッフとして働いているのだが、ある日の午後、社員の方から「明日は業務量が少ないので、お休みにします」と告げられたという。Mさんは、ラッキーと思ったそうだが、十名ほどいた人の中に、素直に応じない人がいた。こんな趣旨のことを社員に言ったそうである。

「補償はないのでしょうか?休みだと言われても、いきなりは困る」

 これはもっともな言い分である。出勤日は月次で予め示されているので、派遣スタッフはその出勤日数をもとに収入を当てにし、また諸々の予定を組み立てているはずである。明日はお休みと急に言われても、他の仕事で埋め合わせようがない。質問された社員は即答できず、持ち帰ることになった。

 Mさんによると、複数の社員で話し合って対応を検討したようである。それで結果的には、勤務時間が若干短くなる可能性はあるものの、当初の予定通り、翌日対象者全員が出勤することになった。先の社員は、最後にこう述べたとのこと。

「配慮がなくてすみませんでした」

 それはそうであろう。配慮がないのだ。思うに、数十年前と比べて、日本の社会が悪くなった大きな点として挙げられるのは、雇う側のモラルが酷くなったことである。派遣スタッフはただでさえ景気の調節弁という側面があるのに、それをさらに徹底して日々の業務量の調節弁にするのは、働く者の生活を脅かすことになりやりすぎであろう。

 
本件、一応落着となったようだが、気になることが一つ残った。それは、「補償はないのでしょうか?」と切り出した勇気ある派遣スタッフの処遇である。今回は切られないとしても、次回以降、この会社の仕事に応募しても、“扱いにくい人”として採用されないかもしれない。「配慮がなくてすみませんでした」という社員の言葉を、今後ずっと対応を改める意を含めた真摯な反省と受けとめていいのかどうか分からない。派遣スタッフの側には、社員のそういう本音の部分を確認する術もないのである。

(2016年3月15日記)

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