« “元気”の正しい使い方 | トップページ | ビーフストロガノフ »

2015年12月 2日 (水)

貴方はだあれ?

 毎朝、職場の入り口で社員の方からIDカードを受け取って、部屋に入ることになっている。これは、変わったことが何も起きるはずがない“儀式”みたいなものだが、ある日のこと、IDカードを持った社員が来るのを待っていた私の目の前に、妙齢の(?)女性が現れた。そして、私の顔を見るなりみるみる笑顔になり、「お久しぶりー」と言いながら歩み寄ってきた。

 あっという間に間合いが1メートル以内に詰まった。私は咄嗟に、「ご無沙汰してます」と返した。彼女は、私と同じ職場かもしれないが、別の仕事に応募し採用されてやってきたのだろう。問題は、私は彼女が誰だか分からなかったことである。名前ばかりか、どこで会った人なのかも思い出せない。モヤモヤした気持ちのまま、IDカードを受け取ってその日の業務を開始した。

 一度錆びついた記憶の扉を開けるのは大変である。彼女を思い出したのは、それから数時間経った頃だった。一年近く前、今とは別の仕事で、近くの席になったことがあったような気がした。仕事上の連携など直接のつながりはなかったから、挨拶を交わした程度だったと思うが、「そういえばいたような……」という感じの淡い記憶である。

 基本的に私は、人間関係に無頓着な性分である。だから、こうした“事件”がたまに起こる。それによって金銭的被害などの実害は何も受けないが、心中は穏やかでなくなってしまう。濃い人間関係を求めない流儀が、かえって不安な感情を惹起してしまうのだ。かといって私は、今回の一件を教訓として、人の顔と名前をもっと覚えようと改心する気もない。本当に身に付けたい術は、「(実は貴方のことを知らないが)知っていますよ」と相手に上手く伝える演技力の方である。

(2015年12月2日記)

« “元気”の正しい使い方 | トップページ | ビーフストロガノフ »

人間関係」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/573382/62814446

この記事へのトラックバック一覧です: 貴方はだあれ?:

« “元気”の正しい使い方 | トップページ | ビーフストロガノフ »