« 人生の幹を決めるもの | トップページ | モテ期 »

2015年10月 6日 (火)

突然の来訪者

 母から聞いた話である。数日前、夜八時頃に家に人が訪ねて来た。インターホンが鳴ったので窓の外を覗くと、父の友人Kさんであったという。母へ事前の連絡はなく、全く突然の来訪であった。

 確か年齢は、Kさんが父より二つほど上だが、親友と言っていい間柄だったそうである。同じ会社に勤めていたのだが、Kさんは働き盛りのうちに脱サラし、雪の降る地方へ移住してペンション経営を始めた。当時父は反対したらしいが、Kさんは料理から大工まで自分でできる自活力の持ち主で、自信があったのだろう。昭和時代にあったレジャーブーム、スキーブームに乗ってペンションは成功。その後、全国的に不動産価格が上がった頃にペンションを売却してリタイヤしたという。

 
父の葬儀は身内による家族葬としたため、Kさんには何もお伝えしていなかった。ところがKさんは、母も驚いたことに、父が亡くなった翌日に家に電話をかけてきた。虫の知らせのようなものがあったのかもしれない。父が入院していて、人と会ってももう誰だか分からないような状態であることを以前からお伝えしていたので、Kさんにはお見舞いを遠慮してもらった経緯があった。

 その晩、Kさんは亡くなった父へお線香をあげて帰られたが、元気なうちに父に会っておけばよかったと、後悔の言葉を口にされたそうだ。Kさんを慕う父にも、生前会っておけば……という気はあったに違いない。ただ、父は旅行や遠出を好まなかった性分もあって、殆ど会いには行かなかった。

 母曰く、父は人の好き嫌いがはっきりしていて、それが態度に出るのを憚らなかったという。一部の上司など嫌な人にはあからさまに背を向けたが、好きな人には本当に心を許したのだろう。Kさんは心を許した“好きな人”の筆頭格だったようである。

 Kさんは、80代半ばの身で、単身、遠方から車を運転して父のもとへ来て下さった。これは簡単にできることではないだろう。私は父の人間関係をよく知らないが、少なくとも一人、素晴らしい友人に恵まれたことは確かである。私はとても嬉しい気持ちになり、電話口で母の報告を聞き続けた。

(2015年10月6日記)

« 人生の幹を決めるもの | トップページ | モテ期 »

人間関係」カテゴリの記事

親・実家」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/573382/62423581

この記事へのトラックバック一覧です: 突然の来訪者:

« 人生の幹を決めるもの | トップページ | モテ期 »