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2015年8月27日 (木)

マニュアルを外れる危険性(後編)

 昨日は試験の受験者に配慮してマニュアルから外れた動きを取り上げたが、監督業務を自分がやりやすくするために外れる例もある。過去にこんなことがあった。

 その試験は、受験者に試験時間中の途中退出が認められており、退出を希望する者は問題用紙を持ち帰らずに提出する必要があった。つまり、早く解答が終わって途中退出する人が10人出れば、試験終了時には答案用紙、問題用紙が10部ずつ回収されている、ということである。私は、教室を統括する監督者の下で補助として働いていたのだが、試験途中にその人から以下の指示を受けた。

「途中退出する人には、問題用紙の表紙に受験番号と氏名を書いて提出してもらって下さい」

 私はそれまでに、このような指示を受けたことがなかった。不思議に思ってマニュアルを読み返したが、受験番号と氏名を、記入欄の設けられていない問題用紙に記入させるような記述は見当たらない。私は疑問が解消しないまま、言われた通りに動いたが、試験終了後、書かせた理由をその監督者に思い切って訊いてみた。すると、こう返ってきた。

「問題用紙を確実に回収するためです。こうすれば、うっかり持ち帰る人がでにくいし、でても誰だか分かるでしょう?」

 ははぁ、と私は思った。回収した問題用紙すべてに受験番号と氏名があれば、うっかり持ち帰った人がいても後で誰だかを特定することができる。それでこの人は、自分の判断でアレンジを加えたのだ。意図はよく理解できたが、それでも問題は残ると私は思った。

 一番気になったのは、回収した問題用紙が、個人情報の記載された廃棄対象物になることである。試験の主催者がこれを理解して、個人情報の印刷された他の資料と一緒にきちんと処分すれば何も起きないが、沢山ある“無記名”の問題用紙に紛れて捨てられた場合、個人情報流出のリスクがあると言えるだろう。やはり、勝手な判断でマニュアルから外れては危ないのだ。

 先の話には続きがある。私が補佐したこの試験監督は、経験が豊富そうで、せっかちと言ってもいいほど仕事がテキパキとしていたが、最後の最後に味噌がついた。答案等の提出場所である試験本部から控室へなかなか戻ってこないので、おかしいなと思っていると、20分ほど経ってようやく姿を現した。遅れた理由は、試験の報告書類への記入がマニュアル通りに行われておらず、本部から大幅な書き直しを求められたため、と分かった。この人がこれで反省や学習をしたかどうかは知らないが、こういった類の仕事は、マニュアルに忠実に進めるのが基本中の基本なのである。

(2015年8月27日記)

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