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2015年8月10日 (月)

日本料理とフランス料理

 今月4日のブログで日本人の味覚について取り上げたが、今日はそれに関連する話。私は普段、ジャンルを限定せずに読書をするので、時に料理に関する本も手に取ったりする。暫く前に読破した料理の本に疑問に思えた箇所があり、ずっと頭の隅に残っていた。以下はそのくだりである。

《よく「日本料理は引き算の料理、フランス料理は足し算の料理」といわれます。日本料理は、余計な調理を極力省き、素材そのものの味を引き立たせることを優先させるのに対し、フランス料理は、多彩な食材を組み合わせ、深みのあるソースが味のベースになっているからです》

(『料理と科学のおいしい出会い 分子調理が食の常識を変える』(2014年発行、石川伸一著、化学同人))

 この《日本料理は引き算の料理》というのが、私には理解できなかった。現在私はキッチンに立って食事を作るが、具材も調味料も様々な種類を用いており、「足し算はあっても引き算はない」という考え方で凝り固まっていたのである。この引き算の意味は分からないが、ネットで調べるほどのテーマでもないと思い、やり過ごしていた。

 ところがある日、急に視界が開けることになった。雑誌を読んでいて、偶然答えを見つけたのである。『週刊文春』で連載されている『阿川佐和子のこの人に会いたい』というコーナーで、阿川さんが対談相手であるトラベルジャーナリスト、フードジャーナリストのマイケル・ブースさんというイギリス人から聞き取っておられた。とても明快である。

《ブース 日本食とフランス料理はベクトルが正反対で、技術的にもほとんど交叉するところがないぐらいなんですね。

阿川 そんなに真逆?

ブース ええ、とにかく正反対のやり方ですね。

阿川 それはつまり……って、そんなに簡単には言えないと思いますが(笑)、どういう点ですか?

ブース まず、基礎中の基礎が、フランスだとフォン・ド・ヴォー、日本だと出汁ですよね。フォン・ド・ヴォーは、骨や野菜を数時間煮込んで旨味を凝縮していきます。一方の出汁は、魚を乾燥させたものを削って、それをお湯に一分ぐらい浸してさっと上げるだけで……。

阿川 鰹節ね。

ブース そうそう。だから、根本的な部分がまったく違うわけです》

(『週刊文春』201572日号)

 
出汁を例に言われれば、その通りであって、疑問氷解である。改めてよく考えてみると、私が《日本料理は引き算》を理解できなかったのも無理はない。201312月に『和食:日本人の伝統的な食文化』がユネスコ無形文化遺産に登録されたが、私が普段自炊するのはそのような伝統的な和食ではなく、和洋中などを自己流でアレンジさせたテキトーな料理だからである。出汁は自分では殆どとったことがなく、妻任せであった(鰹節は買いに行くけれど)。今回の件を機に、ちょっぴり反省である。

(2015年8月10日記)

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