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2015年6月 2日 (火)

『右手ほくろの会』

 唐突だが、わが家が選ぶ“先週のトップニュース”は、《将棋棋士・羽生善治さんの名人防衛》であった(←妻も私も羽生さんの大ファンだからである)。毎週月曜日は『週刊将棋』という将棋雑誌の発売日で、タイトル戦が決着した直後に発売される号は、そのタイトル戦の特集が組まれている。だから私は、羽生さんがタイトルを獲得・防衛するたびに、駅の売店に『週刊将棋』を買いに行くことにしている。昨日はまさにその日であった。

 羽生さんのタイトル戦に特に注目しているのには理由がある。プロの将棋にはタイトル戦が7つあり、それぞれ年に1回タイトル保持者と挑戦者が覇を競うのだが、羽生さんは今回の名人防衛により、タイトル獲得が通算91回となった。この数字は昭和の大棋士・大山康晴さんを抜いてすでに歴代一位なのだが、前人未到、空前絶後の100回に向けてカウントダウンが始まっているのである。

 そういう状況もあって、妻の羽生さん応援には熱が入る。今回の名人戦では、妻はNHKのBS放送で羽生さんの対局姿を観ていて、「あっ!」と声をあげた。駒を動かす羽生さんの右手にほくろがあったのを発見したという。そのほくろの位置が、妻の右手にあるほくろの位置とかなり重なるらしい。

 その日、妻はかなり上機嫌だった。そして、「羽生ちゃんと『右手ほくろの会』を結成した」と言い始めた(ここだけの話、妻は羽生さんのことを「羽生ちゃん」と呼ぶ)。もちろんこれは、羽生さんがあずかり知らぬ勝手な空想上の会である。右手にほくろのない私は、その会には当然入れてもらえず、なんだか意地悪されたような変な気分になった。

 『右手ほくろの会』結成により、私には一つ心配ごとができた。将棋ファンには棋士と交流する場が設けられることがある。実際妻と私は以前、『将棋日本シリーズ』という公開対局の棋戦で、優勝した羽生さんと握手をしてもらったことがあった。ファンが長蛇の列を作り優勝者と握手する一種の“握手会”なので、手を握るのは一瞬なのだが、もし今後妻が応援に行って、羽生さんが決勝戦で勝てば、また並ぶことになるかもしれない。その時妻がほくろを探して、握った羽生さんの右手をまじまじと見つめなければいいのだが……。そんなことをしたら、スーパースターを相手に礼を失したとんでもない“悪手”になるから、私には心配ごとなのである。

(2015年6月2日記)

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