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2015年3月31日 (火)

正社員と契約社員の境目

 かつて、「早く行ってみたいですね、料亭に!」という能天気に取れる発言で世間を賑わせたことがある元国会議員・杉村太蔵さんの著書、『バカでも資産1億円』(2014年発行、小学館)を興味深く読んだ。派遣社員としてオフィスビルのトイレ清掃をする仕事から社会人生活をスタートしたタイゾーさんが、外資系証券会社の契約社員に転身するエピソードが異色で大変驚かされたのだが、契約更新の日を数日過ぎても人事部から更新に関する連絡が来なかったことに激昂するくだりがある。

《更新されないにしても連絡は来るはずです。さすがにおかしいと、ぼくは人事部に恐る恐る「いかがでしょうか……」と内線電話を入れました。

 すると、担当者が代わっていて、「あっ、すみませ~ん。連絡するのを忘れてました~」と、こともなげに軽―く言うではありませんか! その言い方にブチ切れ、人事部に駆けつけました。そして、担当者に「ちょっと待て~っ! あんたはぼくがどんな思いで働いているのか、わかっているのか!」と怒りをぶちまけました。担当者をはじめ、フロアにいるほかの多くの従業員は唖然としてぼくを見ていますが、構わず続けました。

「ぼくの身になってみろ! 毎日ドキドキしてたんだぞ。正社員のオマエにその気持ちがわかるか!」

(中略)
 
 最初から正社員という立場にいると、ぼくみたいに契約で働いている人への配慮を欠くことになりがちです。ぼく自身、大学を中退し派遣会社で仕事をして以来、ずっと安定しない雇用形態にいるだけに、それが身に沁みている。

 もし自分が正社員の立場にいるのなら、契約社員、派遣社員、アルバイトといった雇用形態の人のことを考えないで行動していると、思わぬところで不満が生じかねません》

(『バカでも資産1億円』(2014年発行、杉村太蔵著、小学館))

 人から聞いた次のような話もある。大企業に勤めているある契約社員は、有給休暇を取得する予定の正社員の同僚からバンバン仕事をふられ、疲れ切っているという。しかし、それに対してものを言うことができないでいるらしい。なぜかと言えば、ものを言うことで正社員との間で軋轢が生じ、契約が更新されなくなるのが心配だからである。タイゾーさんのようにストレートに抗議できる人は少数派で、多くの人は職を失わないために我慢や無理を重ねることになると思われる。

 以上から、同じ社員ながら、正社員と契約社員の決定的な境目が明らかになっている。正社員は期間の定めのない雇用契約のため解雇されるリスクが殆どない(ブラック企業を除く)のに対し、契約社員は契約更新のタイミングの度に選別を受ける大きなリスクに晒されているのである。

 これが昨日の話とどう繋がるかと言えば、違いの大きい正社員と契約社員が、果たしてどこまでお互いに協力的でいられるか、ということである。もちろん、会社や職場、そこの上司によってケースバイケースであり、一概には言えないところがあるとは思うのだが、同じ日本人として助け合うことが当たり前という共通認識に立っているかというと、私はかなり懐疑的である。先ほどの例で言えば、有給休暇を取るためにバンバン仕事をふるという行為に、相手を尊重し助け合う精神は見い出せないだろう。

 昨日、《社会は細かく分断され……》とも書いたが、同じ会社という器の中にあっても、正社員と契約社員は分断された集団であると私は捉えている。日本全体を俯瞰すれば、こうした分断された集団が数限りなくあり、それぞれが自らのために動いているというわけである。今の日本において、協力的であろうとする気持ちや助け合う精神は、どこから導いてくればいいのだろうか、とつくづく思う。

(2015年3月31日記)

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