« 好きな女の子の家に電話をかけるということ | トップページ | 数値目標の問題点 »

2015年1月21日 (水)

「売れるから」という理由で増える本

 「ここまできたか」と感想を持ったことがあった。私は近年、嫌中・嫌韓の空気の広がりを不気味に感じてきたのだが、1月13日放映のNHK『クローズアップ現代』「ヘイトスピーチを問う~戦後70 いま何が~」を観て驚きを禁じ得なかった。街の書店を見ていて、愛国心をことさら強調し、嫌中・嫌韓を憚らない過激な書籍が増えているなあとは思っていたが、その背景の一つとして、“そういう本を出せば売れるから”という思惑を持った出版社があることが、番組で分かったからである。

 書籍は単なる消費財ではなく、書き手の精神や思想が詰まったものである。故にそうしたものを編集して世に出す出版社には、本のテーマや内容にこだわりがあって当然だと思っていたのだが、必ずしもそうではなさそうだというのが、番組を観ての率直な印象であった。残念である。

 「良い本とはどのような本か?」という問いに対して、「売れる本が良い本である」とする見方があることを私は知っており、それに理解できる部分もある。しかし、特定の国々を目の敵にしたような本、自国ばかりを礼讃する本が、“よく売れるから”という理由で数多く書店に並んでいるとすれば、商業主義のゆきすぎではないかと思う。そうした本を読んだ人たちの見方、考え方を変質させ、時に煽り、結果同質的な偏った考え方をする人たちが増えることで、社会の多様性や思想・言論の自由といったものが損なわれるかもしれないと懸念されるからである。

 出版不況と言われて何十年にもなるが、出版社が売上を増やしたいがために、将来的に社会を変な方向に導きかねない編集方針に傾斜するのはどうかと思う。存続の岐路に立つ会社の方から、「キレイごとを言うな」とお叱りを受けるかもしれないが、高い気位と矜持を持って世に問える本を生みだせないのであれば、そういう出版社はもう事業を畳む時期なのかもしれない。

 いささか過激なことを書いたが、ただでさえ一方向に靡きやすい日本人、日本社会である。多数派がひとたび勢いづけば、少数派を徹底的に圧する空気が醸成されやすい国である。これからの日本を変な方向、危うい方向に動かしかねない書籍の増加に、私は大きな不安を感じている。今は多少コントラリアン(他人と反対の言動をとる人)的な人間だと自認していることもあり、時代錯誤、時代遅れと言われるかもしれないが、今こそ出版社の良心というものを問うてみたいと思う。

(2015年1月21日記)

« 好きな女の子の家に電話をかけるということ | トップページ | 数値目標の問題点 »

メディア(テレビ・ネット他)」カテゴリの記事

企業経営」カテゴリの記事

政治・国際情勢・歴史」カテゴリの記事

日本・日本人論」カテゴリの記事

本・読書」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/573382/61006057

この記事へのトラックバック一覧です: 「売れるから」という理由で増える本:

« 好きな女の子の家に電話をかけるということ | トップページ | 数値目標の問題点 »