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2014年12月 6日 (土)

害を加えぬこと、喧嘩をせぬこと

 第二次世界大戦時、日本軍が占領していたオランダ領東インドにおける刑務所での体験を綴ったオランダ人の回想録『よい旅を』(ウィレム・ユーケス著、新潮社)を読んだ。かの戦争の記録は数多く残されているが、戦闘の地域や書き手の立場(連合国側か枢軸国側かなど)によって、スポットライトが当てられる史実が大きく異なるのが興味深い。また、今も変わらぬ日本人の特徴についての言及もあり、なるほどと頷きながら読み進めた。

 さて本書は、著者が95歳の時に70年前の体験を纏めたとあって、記憶の制約からか詳しい記述はあまりないが、示唆に富んだエピソードに巡り合えたので紹介したいと思う。著者と同じく囚われの身であった同胞が密かに取った戦後の行動が、簡潔に記されている。

《ウィムには絵の才能と鋭い観察力も備わっていたので、軍律会議の拘置所での後半、我々にひどい仕打ちをした看守たちの顔を解放後にスケッチし、捜索の助けをしていた》

(『よい旅を』(2014年発行、ウィレム・ユーケス著、新潮社))

 日本人の看守が戦後、戦犯として拘束されたかどうかは分からないが、まさかその日本人は、虐げた捕虜の中に絵の上手い者がいて自分を観察し、自分を捕まえようと積極的に関わろうとは想像すらしなかっただろう。

 こんな例もある。満洲生まれのギャグ漫画の大家、故・赤塚不二夫先生が著書『赤塚不二夫自叙伝 これでいいのだ』(2008年発行、文藝春秋)で述懐されているのだが、敗戦により日本人と中国人の立場が逆転した。そういう状況下、赤塚一家は部下の中国人に助けられ日本に戻ることができたが、中国人の部下をいじめていた日本人は惨殺されたというのである。恨みが募った末の報復に違いない。満洲にいた同じ日本人でも、振る舞いによって生き死にの明暗が分かれたと言える。

 
以上二つの話から導かれる教訓は、『害を加えぬこと、喧嘩をせぬこと』である。今自分が相手よりも優位な力関係にあったとしても、将来ひっくり返らないとは限らない。相手を侮り見くびった態度や行動を取ったり、攻撃を加えたりすると、攻守入れ替わった時には思わぬしっぺ返しを喰らうことがあるということである。

 私はさしてこうしたことを気にする年齢ではなくなっているのだが、この『害を加えぬこと、喧嘩をせぬこと』という教訓は、最近加えた行動指針の一つになっている。

(12月6日記)

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