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2014年12月31日 (水)

働くことの裏側

 『雇用改革の現実』(大内伸哉著、日本経済新聞出版社)という本を読んでみた。日本のビジネスパーソンは、「働き甲斐とは」、「働く意義とは」、「仕事とは」といった問いかけをよく行なっていると思うのだが、精神論や感情論の域にとどまることが多く、肝心要の法的側面を押さえて問いかけている人は意外と少ないのではないだろうか。本書は労働法の研究者が執筆されたものなので、最近の雇用・労働問題を理解したい人にとって良いガイドブックになると思う。

 この本はある箇所で、《無期転換ルールはかえって契約打ち切りを招く》と指摘している。問題の全体像が分かるように引用してみたい。

《(2012年の労働契約法の改正の際に初めて導入された)無期転換ルールとは、有期労働契約が更新されて通算5年を超え、労働者が無期労働契約の申し込みをすると、使用者はそれを承諾したものとみなすというものである。簡単に言うと、労働者に無期転換申込み権を与えるということである》

《無期転換ルールは、その内容に多少のバリエーションはあるが、ヨーロッパ各国、中国、韓国などで設けられており、国際的には一般的なルールである。しかし、日本で無期転換ルールが導入されたとき、当初からいくつかの問題点が指摘されていた》

《5年が経過すると無期転換が生じるのであれば、企業としては、5年が経過する前に有期労働契約の更新を終了させようとするであろう。そうすると、かえって有期労働契約で働く労働者の雇用を不安定化させることになる》

(『雇用改革の現実』(2014年発行、大内伸哉著、日本経済新聞出版社))

 このくだりを読んで私は、今年923日に放送された『ガイアの夜明け』(テレビ東京)の『もう泣き寝入りはしない!~立ち上がった“働く若者たち”~』を思い出した。この番組には、大手カフェチェーンに雇い止めをされ、法的手段に訴えることにした女性が登場するのだが、彼女は2003年からアルバイトとして働き始め、3ヵ月更新の契約を重ねることで、通算8年半に亘りそのカフェチェーンで働いてきた。ところが、20123月、会社は従来の「契約期間は3ヵ月契約」という内容を「入社日から通算年で4年間の勤務をもって満了とする」へと変えた雇用契約書を女性に提示、これにより彼女は働き続けることができなくなったという。

 
番組を観ると、訴えられた会社側は“雇い止めではない”という主張であり、今後は法廷の場で争われるようだが、上記の本で指摘されている《かえって有期労働契約で働く労働者の雇用を不安定化させることになる》が現実のものになっていることからすると、労働契約法の改正が逆手に取られて、彼女は希望する仕事を奪われてしまった、ととるのが自然ではないかと思う。

 世の中は、「ガッツリ稼ごう」とか、「経験なくてもできちゃいます」調の軽~いアルバイトの募集広告が溢れていて、それで比較的容易に仕事が見つかる仕組みになっている。が、どのような仕事であれ、働くことの裏側には雇用契約が厳然と存在し、その大元には労働法があり、私たちは契約及び法律の上で、権利義務関係を伴って仕事をしていることを忘れるべきではないだろう。無期転換ルールによる雇い止めは表面化した問題の一例だが、私が感じ取った教訓は、働く者はそうしたことを肝に銘じて、日頃から労働法を学んでおいた方が賢明だろう、ということである。

(12月31日記)

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