« 自慢で笑いを取る名人 | トップページ | 東京ディズニーランドで感じてきたこと »

2014年6月10日 (火)

日本人の一人行動を考える

 たまたま目にした記事だが、経済誌『週刊東洋経済』(201453-10日号)に掲載されていた明治大学・鈴木賢志教授の『日本人の価値観』(第12回)は非常に興味深かった。「余暇をどのように過ごしたいか」という設問に下記の選択肢から回答する、34か国を対象とした国際比較調査(2007年)が紹介されている。

【選択肢(4択)】

①大抵の時間を誰かと一緒に過ごすほうがよい

②誰かと一緒の時間が長いほうがよい

③1人の時間が長いほうがよい

④大抵の時間を1人で過ごすほうがよい

 
調査結果であるが、「1人でいるほうがよい」(③または④)と回答した割合が、日本は49.8%で対象34か国中なんとトップになっていた(Cf.2位:フィンランド47.8%、3位:オーストラリア45.8%、4位:米国45.0%、5位:ニュージーランド39.8%)。

 
次の話に移ってみたい。数年前、トイレの中で弁当を食べる大学生がいることがメディアで報じられたことがある。これについて人生の先達たる大人たちは、例えば次のようなコメントや冷静な分析を行なったのであった。

《最近あるテレビの特集でこれまた奇矯な大学生の実態を知らされた。『一人で学生食堂にいけぬ学生』という主題で、そんな学生の多くはトイレの中で密かに一人で食事をすますという。その理由は、食堂で一緒に食事する友達がいないと馬鹿にされる、それが恥ずかしい、だからますます孤独になるという悪循環だとか》

(石原慎太郎都知事「当節、若者気質」、産経新聞201053日)

《なぜ一人で学食に行けないのか。それは、一人で学食で食べていると、「友達のいない孤独なヤツ」と見られるからだという。(中略)一人で食事することそれ自体がイヤだというよりも、一人で食べているのを人から見られるのがイヤなのである》

《「友達のいないヤツ」「孤独なヤツ」と見られることを恐れるあまり、人目のある場所では昼食が食べられなくなり、人目を忍んでトイレに駆け込み個室で弁当を食べる。人の視線に脅える気持ちが、それほどまでに切実なのである》

(『「上から目線」の構造』(2011年発行、榎本博明著、日経経済新聞出版社))

 石原慎太郎氏はこうした大学生を《ひ弱な『子供大人』》と断じており、これは当たっている気がする。が、現象面だけを見ると、こうした学生は食事をする時に「一人でいるほう」を選んだのである。冒頭で取り上げた余暇の過ごし方においても“一人行動”が、食事においても“一人行動”が選択されている。

 
二つのシチュエーションは性格が全く異なるものだが、背景には共通して、日本人の集団主義志向があるように感じられる。余暇の例で言えば、“職場という集団の中で”高い協調性が求められ、仕事に疲れてしまったがために、リラックスを求めて一人になりたいということであり、食事の例で言えば、“友達という集団の中で”良好な人間関係を築いていなければいけないと考えるゆえに、孤立していると他人に見られないために、一人トイレで弁当を食べるということであろう。いずれも、周囲を気にせずにはいられないという集団主義志向にとらわれた結果ではないかと思う。

 
少し遡ると、私たちの“一人行動”は珍しいものではなかったことが分かる。例えば、次の文章には私の学生時代の体験も重なり、大いに納得したのである。

《現代の学生さんにぜひ知っていてほしいのは、ほんの少し前までは、単独行動の学生はそんなに珍しい存在ではなかったということだ。少なくとも、私が学生だった30年前には、ひとりで昼飯をとる学生の姿は、キャンパス内に普通にある自然な光景だった》

(『もっと地雷を踏む勇気 わが炎上の日々』(2012年発行、小田嶋隆著、技術評論社))

 
実は私は、社会人になってからも、会社の社員食堂において一人で食事を取ることは殆ど気にならなかった。これは、職場の集団主義に完全に背を向けて、天邪鬼に仕事をしたということではない。周囲の視線を無視したのではなく、「柏本さんは一人の食事を好む人なんだ」と見られるかもしれない周囲の視線を予め覚悟した上で、そういう行動を取ったということである。自分の仕事の進捗や予定に沿って食事をするのが自分にとって“自然体”だったから、時にそうしたまでである。

 
最後に私自身の話を語る格好になったが、今日言わんとしたことは、現象として一見個人主義的に見える私たちの“一人行動”も、実は私たちを取り巻く集団主義志向から生じていることが多いようだ、ということである。そうした“一人行動”ではなく、確固たる自分の軸を持った一人行動をとりたいものだと思う。

(6月10日記)

« 自慢で笑いを取る名人 | トップページ | 東京ディズニーランドで感じてきたこと »

人間関係」カテゴリの記事

日本・日本人論」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/573382/59752856

この記事へのトラックバック一覧です: 日本人の一人行動を考える:

« 自慢で笑いを取る名人 | トップページ | 東京ディズニーランドで感じてきたこと »