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2014年6月 9日 (月)

自慢で笑いを取る名人

 このブログで何度か著書から引用させて頂いたことのある方に、数学者・エッセイストの藤原正彦さん(お茶の水女子大学名誉教授)がいらっしゃる。とても不思議なことに、私の妻は藤原さんのことが好きである。誤解のないようもう少し正確に書くと、藤原さんが某新聞(全国紙)で担当されていた人生相談の回答が、他の回答者にない趣きがあって気に入っていたらしい。

 
この人生相談の回答が書籍として纏められていることを知り、早速読んでみた。それが『藤原正彦の人生案内』(2006年発行、藤原正彦著、中央公論新社)である。読んでみたとはいうものの、どのあたりが妻のツボにはまっていたのか、なかなか分からない。が、なんとなく、「妻はこういう書きぶりを面白いと感じたのではないか」と思える箇所が、幾つか出てきた。例えば、以下のような文章である。

【回答例①】:ガールフレンドがいない二十五歳の息子を心配する母親からの相談に対して

《私も二十五歳の時、ガールフレンドは一人もいませんでした。それ以前にも何年間もいませんでした。女性に興味がなかったわけではありません。それどころか非常に興味があったのですが、数学の勉強が忙しく、女友達を作る時間がなかったのです。世の中には、女性がほっておかない男性もいるようですが、私は、素晴らしく魅力的であるにもかかわらず、すべての女性にほっておかれたわけです(以下略)》

【回答例②】:会社の同僚から意地悪をされて悩んでいる五十代の女性からの相談に対して

《大切なことは、皆に好かれようなどと思わないことです。それは心の重荷になるばかりか、まったく不可能なことなのです。どんな聖人でも嫌う人は大勢いますし、この清く正しい私でさえ女房を含め恐らく数十万人の人に嫌われているのです

【回答例③】:学校名で人が判断されることに落ち込む高校二年の女子からの相談に対して

《判断材料が気に入らないのは分かりますが、初期判断をするのに材料が他にないのでどうしようもありません。ただ長い目でみるともっと内面的な要素、例えば誠実、心の温かさ、利己的でないこと、総合的判断力などがはるかに重要となります。だからあなたは、腐ったりせず、内面を磨いていればよいのです。それに、私のような例外も稀にありますが、ふつう内面が磨かれるとそれが外ににじみ出てよい顔になるものなのです

 
妻に、「(面白かったのは)この辺じゃない?」と本を開いて聞いてみたところ、記憶はおぼろげながらも思い当たる節があるようだった。妻を“魅惑”したポイントは下線部にある。藤原さんが前触れなく自慢をさらっと述べた後、自虐的に自分を笑い飛ばしているところが、読んでいて心地良いのだ。今日のブログは最後に、藤原さんにならって私も自慢して笑いを狙おうかと思ったが、ネタを探した末に、自分にはできない芸当だなぁと観念することにした(→本当はスベるのが怖かったのです)。

(6月9日記)

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