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2014年3月 5日 (水)

自分の価値観に合致した買い物をする

 先日、『ダウンタウンDX』というテレビ番組で、作家の西村賢太さんが、藤澤淸造という大正時代の小説家の直筆原稿を400万円以上出して競り落としたことを語っていた。番組では紹介されなかったが、私は藤澤淸造のことを齧っていたため、この買い物のお話は非常に興味深かった。

 
競り落とした西村賢太さんは、2011年に『苦役列車』で芥川賞を受賞された方だ。私小説形式で、孤独で貧しい生活を描いた作品だが、読んだ感想を率直に書けば、主人公の困窮の程度はプロレタリア作家・小林多喜二の『蟹工船』には到底及ばないという感じであった(時代背景の差は勿論あるが)。

 
話が少し逸れたが、藤澤淸造(18891932年)には、『根津権現裏』という代表作がある。大正11年、33歳の時に出版したもので、陰欝な雰囲気の文章が長く続く、貧しさをひたすら呪った小説であった。本人は、破滅的な生活の末、凍死体で発見されている。この藤澤淸造を西村賢太さんは番組で“師匠”と呼んでおり、慕ってこられたのだろう。実際に『苦役列車』のなかで名前を登場させている。

 
西村さんは芥川賞の本の印税で400万円ものお金を投じたと語っていて、番組の出演者は驚いていたが、私は素晴らしい買い物だと思った。自分の価値観に合致した買い物だったからである。

 
比較して考えることのできる話がある。『幸福論』(2006年発行、PHP研究所)という本に、作詞家・秋元康さんが寄せられた文章が載っている。

《身近な幸せに気づくにはどうすればいいか。それは、自分自身の価値基準をしっかり持つことです。僕は若い女性に、よくこんな質問をします。「あなたは高級外車とスカーフのどちらが欲しいですか」。すると、ほとんどの人は「高級外車です」と答える。なぜですかと聞くと「スカーフは買えるけど、高級外車は買えないから」と言う。僕が聞いているのは「どちらが欲しいか」であって、「どちらが値段が高いか」ではありません。物の価値をお金に換算しないと自分の選択ができない。つまりはお金という基準に振り回され、感覚が麻痺しているのです》

 
秋元さんは、実に鋭いところを突いていると思う。自分が何に価値を見出しているかが肝心なのだ。金額の多寡ではない。余計なことながら、私に関して言えば(こんなことは起きないのだが)高級ブランドの鞄やネクタイをプレゼントされるよりも、カカオ含有量の高い好きなチョコレートを沢山もらう方がはるかに嬉しかったりする。

 
今日のタイトルは、『自分の価値観に合致した買い物をする』とした。以上で述べたように、自分の価値観、好みの軸を持つことは、時代や世間に流されない自分らしい人生を送る上でポイントになると思う。

(3月5日記)

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