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2014年3月 3日 (月)

お金で買えないもの

 トゲのある言葉というのは存在する。“お金で買えないものはない”もその一つで、その是非は様々な本に登場してきた。一例を挙げると、こんな具合である。

《この世に金で買えないものはない、なんていったヤツがいた。テレビのコメンテーターをやってるような知識人は、とんでもない思い上がりだって騒いでいたけれど、俺はそうは思わない。思い上がっているわけじゃなくて、それが真実なのだ。そいつにとっては、という意味で。(中略)金で買えないものはないというのは、彼にとっては真理なのだ》

《愛や友情だって金で買えるという人間に、そんなものは愛でも友情でもないんだよと教えてやっても意味がない。だって、そいつには金で買える愛や友情しか見えていないのだ。金で買える愛や友情で、満足しているというだけの話だ》

(『全思考』(2007年発行、北野武、幻冬舎))

 
突き詰めると結論は、たけしさんの言うように<人によって価値観は違うから、それぞれである>ということに落ち着きそうだが、私は別の点に着目したい。それは、多くの場合、お金で買える・買えないが、「愛」「愛情」「友情」ばかりを対象に論じられる傾向がある、ということである。

 
先日夜に近所を歩いていた時のこと。ふと空を見上げると綺麗な満月が浮かんでいた。立ち止まってその月を凝視すると、中央付近に濃淡のある茶色が広がっていた。それで、「昔の人はこれを“兎が餅をついている”ように見たのだなあ」と感じたのである。このように、いにしえの人と心が通じるかのように感じられたのは、大人になってから初めてであった。

 
“お金で買えない”ものとして、こうした感受性も私は挙げておきたい。自然を愛でる心や芸術に感動する心も同様である。風で落葉が舞う様子が趣き深く感じられるのもそうである。自分が欲しいと思っても、いくらお金を積んだところで買うことはできない類のものだと思う。人として生きる機会を与えられている以上、このような心のあり様というものを、私は大事にしていきたい。

(3月3日記)

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