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2014年1月30日 (木)

ヘビを、カエルを、セミを食らう覚悟

 123日放映のテレビ東京『カンブリア宮殿』という番組で、洋菓子メーカーの株式会社エーデルワイスを創業した比屋根毅さん(76歳)の生きざまを、興味深く拝見した。競争の激しいスイーツ業界で、比屋根さん率いるエーデルワイスは現在、「アンテノール」、「ヴィタメール」など8つのブランドを国内で展開している。また、海外で洋菓子作りの技術を学んだ比屋根さんの指導を受け巣立った弟子は、50人を超すという。波瀾万丈ながら、今から振り返れば、人が羨むサクセス・ストーリーであろう。

 
番組を観て、比屋根さんに唸らされたのは、1937年に沖縄・石垣島で生まれ、太平洋戦争の時期をまたいで貧しい環境で育ったエピソードだ。当時は食糧事情が極めて厳しかったことから、《カエル、ヘビ、セミなどなんでも食べた》と放送で語られていた。

 
実は私も、カエルとヘビは食べたことがある。といっても、中国の広東料理でカエルとヘビが食材として使われ、美味しく味付けされていたのをレストランで口にしただけであって、自分で捕まえて食べた経験はさすがにない。セミについては、食べようと思ったことすらない。

 
比屋根さんは、仮に自分の事業が失敗したとしても、昔のような生活に戻って耐えればいいだけじゃないかという覚悟を持って生きていらっしゃる、そんな印象を番組から受けた。食うに困れば、カエル、ヘビ、セミは食べられるよ、というような強靭なタフさが感じられた。

 
一般論として、貧困は悪である。が、厳しく貧しい世界を小さい頃に経験しておくのは、実は生き方の可動域を大きくするような気がする。「失敗したら、もう生きていけない」と思うのと、「失敗しても、何でも食って生きていける」と思うのは、雲泥の差があると感じるのである。今の日本人は、生まれ育った街の至るところに、美味しい食品の揃ったコンビニがあって、至れり尽くせり。これでは、いざというときの生命力など期待はできないだろう。

 
ここから少し、セミのことを掘り下げてみよう。フジテレビの情報バラエティ番組『ホンマでっか!?TV』でお馴染みの生物学者・池田清彦さん(1947年生まれ)は、雑誌に次のようなことを書かれている。

《日本のセミはすべて食える。アベノミクスが破綻してハイパーインフレになって飢えに直面したら、セミを食って頑張ろうね》(週刊朝日2013913日号)

 
これはなかなか凄い文章である。《日本のセミはすべて食える》というのは、体内に毒が含まれていないという意味なのか、池田先生がミンミンゼミ、クマゼミ、ツクツクホウシなど全種類を調理して食べたことがあるからそう言えるのか定かではないが、どうやら本当のことのようだ。『食べられる虫ハンドブック』(2013年発行、内山昭一監修・21世紀の食調査班編、自由国民社)という衝撃的な本に、これまた衝撃的な記述がある。

《セミは5県で食べられており、日本人にも昆虫を食べる食文化があったのです》

《セミは成虫も幼虫も食べられる。幼虫は暗くなって土から出てきて木に上り羽化するまでに採集する。(中略)揚げたてを頬張るとナッツの香ばしい匂いが鼻に抜ける。しっかり身が詰まっているのがセミ幼虫の特徴だ。燻製にするとさらに香りが立って美味しさが増す》

 
冒頭の洋菓子メーカーの話から、共感が全く得られそうもない不気味な話に変わってきてしまったが、少し冷静になって考えてみると、何を気味が悪いと感じるかは、実は微妙なところである。例えば、イクラは魚の卵の塊だし、フグの白子は精巣であり、見ようによっては気持ちが悪い。お寿司のシャコも、形状がグロテスクと言えなくもない。お肉のタンは牛の舌であって、それをリアルに想像すると、舌で“舌鼓を打つ”なんて到底できそうもない。

 
こんな論を展開したところで、自分が本気でセミを食べる気はないのだが、ヘビを、カエルを、セミを食らってまで生きる覚悟は見習いたいと感じて、思い切って筆を進めてみた次第である。先ほど、部屋に置いておいた『食べられる虫ハンドブック』を見た妻が、「私は食べないからね~」と言って通り過ぎていった。それはそうであろう。変な誤解をされなかったか、少々心配である。

(1月30日記)

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