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2014年1月 6日 (月)

働きすぎと過労死を考える

 社会人になって貪欲にビジネスキルの習得に向き合っていた二十代の頃、とても興味深く読んだ企業経営者の言葉に、『電通鬼十則』がある。これは、電通の四代目社長、吉田秀雄氏が社員の行動規範として書き残したもので、中に見られる過激な言い回しが非常に印象的であった。

電通鬼十則】(1951年)

1.仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。

2.仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受身でやるものではない。

3.大きな仕事と取り組め、小さな仕事は己れを小さくする。

4.難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げる所に進歩がある。

5.取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。

6.周囲を引きずり廻せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきが出来る。

7.計画を持て、長期の計画を持って居れば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。

8.自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りもそして厚味すらもない。

9.頭は常に全回転、八方に気を配って一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。

10.摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

 
そもそも電通と言えば、日本の広告業界のリーディングカンパニーである。古くはこの厳しい『電通鬼十則』が有名なのだが、一方で皮肉にも、過労死を巡る事件でも社名を歴史に刻んでいる。いわゆる“電通事件”である。これは、同社の若手社員が自殺した原因が仕事の過労によるものと認定された民事訴訟で、2000年に最高裁の判決が出されている(使用者には労働者に対する安全配慮義務があるとされた)。

 
さて現在、過労死のラインはというと、厚生労働省によれば、①(業務による病気の)発症前1か月間に時間外労働(残業)が100時間超える、または、②発症前26か月前に時間外労働が1か月あたり80時間を超える場合、となっている。この月80時間、月100時間が過労死ラインである。私はこのあたりをしっかり頭に入れないまま会社勤めをしていた時期があったが、部下を持つ立場の企業人はもはや、知らなかったではすまされない時代になっている。

 
日本が右肩上がりの高度経済成長を遂げていた頃、過労死は社会問題として取り上げられなかったようだ。私はまだ子どもだったので実態はよく分からないが、背景として、勤務先の業績拡大により“収入(給料・賞与)増が疲労を癒す”ようなことがあったかもしれないし、今よりも仕事自体が楽しかったかもしれない。また、そもそも当時の日本人のストレス耐性が高かったのかもしれない。あるいは、“会社帰りに職場の同僚と一杯”でストレスを発散させることが多かったせいかもしれない・・・。

 
ここで一つ、興味深い勤務の事例を取り上げたい。カレーハウス・CoCo壱番屋の創業者、宗次徳二さんの猛烈な仕事ぶりについてである。宗次さんの著書『日本一の変人経営者 CoCo壱番屋を全国チェーン店に育てた男の逆境力』(2009年発行、ダイヤモンド社)に、次のような記述がある。

1996年は1日も休みをとらず、5637時間働いた。うるう年のため366日で割ると、1日平均15時間半働いていたことになる。日本の労働者の年間実労働時間の平均は1800時間程度だから、およそ3倍の量だった》

これだけ働ける人がいたというのは驚きである。労働基準法では、1日8時間労働が定められている(第32条)。こうした基準に照らせば、宗次さんの労働時間は常軌を逸しているとも言えるだろう。普通の人ならば倒れてしまうに違いない。もっとも宗次さんは、経営者であって労働者ではないから、一般的な過労死云々の話を当てはめることはできない。私がこのエピソードから読み解いたことは、“楽しくて好きで没頭できる仕事なら、かなりの長時間労働でも乗り切れることがある”ということである。

 逆に言えば、“楽しくて好きで没頭できる仕事”でないならば、ビジネスパーソンは自衛の策を講じる必要があろう。ワーク・ライフ・バランスが声高に叫ばれるようになったご時世だが、勤め先がその環境を提供してくれるとは限らない。なぜなら、企業は社員のワーク・ライフ・バランスよりも業績向上を優先させがちだからである。大半のビジネスパーソンは、今も昔も勤め先に繋縛された存在である。働きすぎずに生計を立てるにはどうしたらよいかを、早いうちから考えた方がいい時代にきていると思う。

(1月6日記)

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